生存率をかんがえた。
NPOをつくりたいと思っている。40歳から64歳までの末期がん患者さんの生活をサポートするNPOである。そのため、緩和ケアやがんについて調べることが多くなっている。
先ごろ、全がん協が最新の生存率データを公表した。このデータをなんとなく見て、話しのタネにしてしまうのはもったいない。そこで今回はこのデータをどう見るかについてかんがえてみたい。
今回10年生存率がクローズアップされているのだが、自分はいつも5年生存率をみているので5年生存率のデータで見ていくこととする。
マスコミなどの紹介では、ステージごとに区切ったデータの紹介はあまり行われていなかった。しかしこのデータは、ステージごとの生存率の違いを見ることがとても重要である。
たとえば、食道がんの場合、5年生存率はステージ1では85.8%、ステージ2では55.1%、ステージ3で28.1%、ステージ4になると12.1%である。
おおざっぱだが、ステージ1はがんが原発臓器にとどまっている状態、2ではすこし広がっているか、リンパ節に少し転移している状態、3はかなり腫瘍が大きくなり、となりの臓器やリンパ節まで広がっている状態、4になると遠隔転移(はなれた臓器にまで転移している状態)があるというふうに見てほしい。
ちなみに5年というスケールのはじまりは、がんと診断されたときから。ということである。
つまり上のデータは、食道がんと診断されたとき、ステージ1といわれたら85.8%の人が5年後まで生存している。逆に言えば、14%強の人(7人に1人)は5年以内に亡くなってしまうという意味である。
食道がんと診断されたときすでにステージ4だったら、5年さきまで生存できる人は8人に1人しかいないということだ。
がんがどこにできるかで、5年生存率は大きく違う。転移しやすいがんもあるし、ステージ1や2では見つかりにくいがんもある。
同じステージ1と診断されても、食道がんの5年生存率が85.8%なのに対し、肝臓がんでは6割弱(58.9%)、膵がんでは4割(41.2%)と低くなる。一方、乳がんやぼうこうがん、甲状腺がんなどはステージ1で見つかればほぼ90から100%の人が5年後まで生き延びる。
つまり、ステージ1や2での5年生存率の高いがんや、ステージ1とステージ4で5年生存率が大きく異なるがんについては早くみつけたほうがいい、というのがこのデータの見方である。
同様のデータに、国立がん研究センターのデータがある。こちらはとても詳しいデータになっている。そして国立がん研究センターのサイトは、早期発見・早期診断の重要性について力を入れている。がん研究センターのデータは、ステージごとではなく、限局・領域・遠隔転移と分かれている。
限局とは、原発臓器内にとどまっている状態、領域とは近くのリンパ節に転移しているか、あるいは隣接した臓器にまで及んでいる(浸潤)状態、遠隔転移とは離れた臓器に転移している状態ということである。
がん診療はとても進歩している。がんになることはそれほど怖いことではないし、がんで死ぬことも実はそんなに悪いことでは無くなってきている。それでも、やはり早期発見・早期診断は大切である。同じように5年間生き延びても、10年間生き延びても初期に発見・診断されるのと、ステージ4で発見されるのとでは、その5年・10年の時間の中身が大きく違うためである。