「さくらのもり」で考えた。

社会福祉士が、福祉や社会保障についていろいろ考えてみるブログです。

いじめについてかんがえた。

ひさしぶりの書き込みなので、ちょっと怖い話を書いてみたい。

 

これはある特定のケースではなく、このごろ見聞きしたいくつかのケースを組み合わせたものであることをご理解していただきたい。

 

中学生ぐらいの男の子が突然自殺してしまったとする。このごろ学校を休みがちで部屋にひきこもっていることが多かった子どもである。

 

亡くなった後、ご両親は子どもの部屋でびっしりと書き込まれたノートをみつける。小さい文字でびっしりと書き込まれていたのは、自分がいかに学校でいじめられているか、という記録である。いやがらせをされたこと、陰で悪口を言われたこと、そうしたことが書き込まれている。

 

両親はびっくりして学校にあるいは教育委員会に駆け込み調査を依頼する。しかし、学校も教育委員会も客観的ないじめの実態はなかったという結論を出し、そう報告する。マスコミは学校や教育委員会は事実を隠蔽していると非難し、両親は自治体を訴える。

 

裁判で両親の訴えが認められないこともあるし、自治体側が負けて多額の賠償金を支払わなければならなくなることもある。どちらにしてもこの経過の中で、学校やPTA、地域社会はぼろぼろになってしまう。

 

ここまで読んで精神医学にくわしい方なら気づいていただけるかもしれない。たとえばびっしり書き込まれたノートを手にすると、精神医学にくわしければある疑いをもつことがあるだろう。「ほんとうにこのいじめは存在したのだろうか?」と。

 

たとえばこの少年が統合失調症を発症していたとしたら。本人がノートにびっしりと書き込んでいたいじめとは、彼の幻覚・妄想だったとしたら。彼に向けられた悪口は幻聴だったのでは。

 

いじめ行為はなかったのである。彼が不登校気味になり、ひきこもってしまったのは「いじめ」が原因なのではなく、病気の症状のひとつにすぎなかったのである。そして自殺も、統合失調症の初期によくみられることである。

 

自殺をしてしまったあとでは、彼が統合失調症を発症していたかどうかということは確かめようがない。ただ言えるのは、もし統合失調症の影響によるものだとしたら、早く医療につなげていれば、彼も死なずにすみ、学校や地域社会もダメージを受けず、自治体も多額の出費をせずにすんだということなのである。

 

こうしたケースで自殺に失敗し、障害を負ってしまった人を知っている。彼は統合失調症と診断され、現在治療を受けている。身体的な障害も負ってしまっているため、社会復帰には時間がかかるものの、とにかく彼は生きているし、それなりにいきいきと日常生活を送っている。学校や地域社会はダメージを受けずにすみ、自治体も損害賠償を払わずにすんだ。

 

統合失調症を一般の人に説明するときに、「およそ100人にひとりがかかる病気です。」と言う。学校なら3クラスに一人は確実にいる計算である。統合失調症は若いときに罹患する疾病であり、中学生ぐらいで発症することはまれではあるとされているものの、可能性はそれほど低くはない。

 

もし中学生ぐらいの子どもがいじめを受けていると訴えていて、なかなか客観的な事実が見つからないときは、病気を疑うことも必要である。

 

いじめの訴えではなく、女性からのDVの訴えとか、職場でのパワハラとかいうケースもあるらしいのだが、そっちの話はほんとうに怖いので書けません。