「さくらのもり」で考えた。

社会福祉士が、福祉や社会保障についていろいろ考えてみるブログです。

介護タクシーの種類

 いわゆる介護タクシーには、4つの種類があります。ケアマネさんや行政の担当者でも知らない方が多いようですので、まとめてみました。

1.一般乗用旅客自動車運送事業福祉限定)緑ナンバー
 弊社のタクシーがこのタイプです。道路運送法4条許可とも言います。利用できる方は、要支援・要介護の方、障害者手帳をお持ちの方などとなっていてどなたでもご利用いただけるわけではありません。車両は車いすやストレッチャー対応の車両だけでなく、普通の車両でも許可がおります。ドライバーに介護の資格は必要ありませんが、普通の車両(セダン型といいます)の場合のみ初任者研修以上の資格が必要となります。運賃は一般のタクシーと同じですが、乗降介助料金(だいたい1,000円)や設備利用料(車いすやストレッチャーを利用した場合に、2,000円とか)が必要な場合があります。基本的には1Kmあたり300円から400円ぐらいかかります。運行に制限はありませんので、24時間対応・行先についても制約はありません。

2.特定旅客自動車運送事業道路運送法43条許可)緑ナンバー
 指定介護サービス事業者でなければ許可がおりません。その事業者を利用する要支援者・要介護者等の「ケアプランに組み込まれた輸送のみ」行うことができます。と言っても、ケアプランに組み込まれる輸送はほとんどが費用を請求できないため、あまり意味が無いような気がします。4条許可と異なり、乗り合いでの利用が可能です。運賃はどうなっているのか正直よくわかりません。利用者との間で契約を結び届出をすればよいということですので、どういう体系なのかも不明です。近くの事業所ではもっぱら通常のデイサービスの送迎に使っているようです。その場合、運賃はどうなっているのか(デイの送迎では運賃はもらえないはず)わかりません。

3.福祉有償運送(道路運送法79条登録)白ナンバー
 いわゆるNPO輸送です。これは許可ではなく登録制です。白ナンバーですので1種免許で運転できます。登録できるのは市町村やNPOなどの非営利団体です。登録制ですが市町村の運営協議会で必要性についての合意が無ければ登録できません。本来、交通が不便な地域でなくては運営協議会の合意が得られないのですが、簡単に合意を出してしまうところもあります。一方、なかなか協議会自体を開催してくれない自治体もあるようです。協議会には利害関係者が出席することになっているので、一般のタクシー・バス事業者や弊社のような介護タクシー事業者も出席しなくてはいけないのですが、弊社に協議会開催の話がきたことはありません。運賃はおおむね一般のタクシーの半額程度ということになっているので、1Kmあたり150円ぐらいです。利用できるのはNPOの場合、会員のみとなりますので入会金や年会費などが必要になります。運行できる範囲は協議会を開催した自治体にある自宅と病院や商業施設などの往復となっています。(病院や商業施設が他の自治体にあってもかまわない)複数の自治体に居住する会員のニーズに応えるためには、複数の自治体で協議会を開催してもらう必要があります。早朝・夜間は運行しない事業者がほとんどですし、土曜や日曜は休むところも多いようです。利用の目的も限定され、買い物は日用品までなどと規約で定めている事業者がほとんどです。飲食店もお酒を主に出す店(居酒屋など)はだめとか、飲酒しての乗車はだめ、などとなっているようです。ドライバーは主に主婦のパートと定年退職後の男性が多いようです。

4.自家用自動車有償運送(道路運送法78条許可)白ナンバー
 ヘルパーによる有償運送です。介護事業所の指定を受けている法人に所属するヘルパーさんやケアマネさんが自分の車を使って行う有償運送です。たとえば訪問介護を行っているヘルパーさんが、利用者さんを病院に連れて行くなどという場合です。運行はケアプランに組み込まれたもののみであり、運行エリアも介護事業所の営業範囲となります。運賃はガソリン代程度ということで1Kmあたり30円ぐらいとなります。

 これ以外の介護タクシー福祉タクシー(を名乗るもの)は、すべて違法です。と、言いたいところですが、上にあげた4つの種類でもかなり違法行為がまかり通っています。1番の(福祉限定)介護タクシーは4種類の中ではもっとも運賃が高いため人気がありません。そのためケアマネと組んで、訪問介護1時間のケアプランを組んでもらい、実際はタクシーでの送迎を行って介護報酬を請求する(タクシー事業者は1時間分で4,000円の
売上がたち、利用者は400円でタクシーに乗れる)というやりかたをとっている事業者もあります。もちろん不正請求ですが、タクシー事業者とケアマネが身内だったり、市町村(介護保険の保険者)が黙認していたりすると発覚しません。市町村が黙認してしまうのは、路線バスが撤退してしまったような交通が不便な地域の住民から代替交通の要求を出されると多額の経費がかかるといった事情があるのかもしれません。

 2番目の特定旅客自動車運送事業については運行形態がよくわからないのですが、デイの送迎に使っているというのはあきらかに違法です。デイの送迎に運賃を請求してはいけないし、運賃を請求せずに運送事業を営んではいけないのです。3番目の福祉有償運送はわりと不正が少ないようです。ただ福祉有償運送の場合、片道のみの利用や復路などでの寄り道、自宅以外への送りはいけないはずなのですが実際には行っている事業者もあるようです。

 4番目のヘルパー輸送はほとんど闇です。弊社のお客さまに伺ったお話では、ケアプランに基づかない運行、というよりヘルパーとして勤務していない時間帯に運行してくれたりします。その場合運賃は1Km30円ではなく1回3,000円となったりするようです。請求したりといったケースもあるようです。またお金をとらないかわりに宗教の勧誘をされたり、商品を買わされたりという話も耳にします。

 まじめにやっている事業者はわりとみんな大変な思いをしています。特に我々のような4条許可の介護タクシー福祉有償運送の事業者です。福祉有償運送はよほどうまくやらないと事業の継続はむずかしくなってきています。4条許可の介護タクシーはよほどうまくやっても経営は難しい状況です。